これは、うつ病が治ったという報告ではない。
いまの私は、薬の増量によって状態が変化しているかもしれない、その過渡期にいる。
変化に気づいてから、まだ5日しか経っていない。明日にはまた調子を崩すかもしれないし、本当に薬の効果なのかも分からない。
それでも、回復してから過去を振り返るのではなく、変化の途中にいる今だからこそ残せる記録があるように思った。
増量前の私は、生活しながら不安に飲み込まれていた
私はトリンテリックス10mgを、1年弱服用していた。
しかし、増量前の時点では、薬の効果をまったく実感できていなかった。
特につらかったのは不安だった。
一人でいる時間には、仕事を続けられなくなること、そのあとの生活やお金、将来のこと、このまま回復しないのではないかという恐怖が次々と浮かんできた。
何かをして気を紛らわせても、少しするとまた不安が襲ってくる。
休日にパートナーと楽しい場所へ出かけても、頭の中では「明日には仕事ができなくなっているかもしれない」「この仕事を続けられないかもしれない」と考えていた。
体はその場所にいても、気持ちはずっと明日の仕事と、その先に起こるかもしれない破綻に捕まっていた。
ゲームもした。絵も描いていた。
けれど、楽しくはなかった。それでも続けていたのは、昔の自分を取り戻したかったからだ。
絵を描こうとしても、描きたいものがない。描けない。手癖だけで、同じような絵しか思い浮かばなかった。
生活も趣味も完全に止まっていたわけではない。ただ、不安が頭の中を占領し、楽しさや感動の入る余地がほとんどなくなっていた。
そんな状態で、薬を増量することになった。
9月26日、10mgから20mgへ増量した
診察で私は、医師にこう伝えた。
「もう駄目です。生きるのが辛いです。どうすればいいですか」
そして9月26日、トリンテリックスが10mgから20mgへ増量された。
ただ、私は増量に期待していなかった。
1年弱飲み続けても効果を感じられなかった薬を、倍にしたところで何かが変わるとは思えなかった。薬を信じて、変化を待ち構えていたわけでもない。
実際、9月26日から29日までは何の変化も感じなかった。
増量した翌日から急に元気になった、という話ではない。
9月30日、「そういえば苦しくないぞ」と気づいた
変化に気づいたのは、増量から4日ほど経った9月30日だった。
その日は休日だった。
突然、強い幸福感が押し寄せてきたわけではない。朝から元気いっぱいになったわけでもない。
ただ、ふと気づいた。
「そういえば、苦しくないぞ」
不安が完全に消えたわけではない。しかし、不安な考えが浮かび上がってくる頻度が明らかに減っていた。浮かんできても、以前のようにそのまま飲み込まれにくくなった。
翌日の10月1日には、仕事で失敗した。
以前の私なら、一つの失敗から「もう仕事を続けられない」「この先どうなるんだ」と考えを膨らませ、帰宅してからも何度も思い返していただろう。
ところが、その日は違った。
「失敗したけど、しゃあない」
そう考えている自分を、少し離れたところから眺めることができた。
失敗が平気になったのではない。嫌なことが起きても、それを人生全体の破綻にまで広げずに済んだ。
そして、この感覚は一日だけで終わらなかった。9月30日から10月4日までの5日間、「以前ほど苦しくない」という状態が続いている。
音楽に感動し、絵のそばに「戻ってきた」と書いた
変化は、不安やストレスへの反応だけではなかった。
初めて聴くMrs. GREEN APPLEの曲に心が動き、その曲を聴きながら絵を描いていると、自然にペンが進んだ。
増量前は、描きたいものが浮かばず、手癖で同じような絵を描くことしかできなかった。
それが、その日は音楽から受け取った感情が、そのまま線になっていくような感覚があった。
少しだけ自分が戻ってきた。それがうれしくて、私は描いた絵のそばに「戻ってきた」と書き込んだ。
幸福感が突然押し寄せてきたわけではない。
なくなっていた「美しいものに感動する感覚」と、それを絵に変える力が、少しずつ戻ってきたのだと思う。
本当に薬の効果なのか
増量した時期と、状態が変わり始めた時期は重なっている。
しかも私は、増量に期待していなかった。数日間は何の変化もなく、薬が効くとも思っていなかった。そのため、少なくとも強い期待だけで起きた変化とは考えにくいように感じている。
ただし、これだけで薬の効果だと断定することはできない。
最初に変化へ気づいた日は休日だった。休息、音楽、楽しい出来事、睡眠、仕事上のストレスの波など、状態に影響しそうな要因はほかにもある。プラセボの可能性も、完全には否定できない。
原因はまだ分からない。
ただ、自分の状態が変わっていること自体は、確かに感じている。
まだ回復の途中だから、今書いておく
変化に気づいてから、まだ5日しか経っていない。
この先また、強く落ち込む日が来るかもしれない。以前のように不安に飲み込まれる日もあるかもしれない。
それでも、悪い日が来たからといって、この5日間までなかったことにする必要はない。
回復は、ある日を境に一直線に進むものではなく、良い日と悪い日を行き来しながら進むものなのかもしれない。
今の段階で「薬が効いた」「回復した」と結論づけるつもりはない。これから数週間、自分の不安の強さ、ストレスを受けたあとの戻り方、絵や音楽への反応を観察していく。
数週間後、あるいは1か月後に、改めてこの変化を評価したい。
これは治療法を勧めるための記事ではなく、薬を増量したあとに私の中で起きた変化を、その途中で残した個人的な記録である。薬の服用量を変更するときは、自己判断ではなく医師に相談してほしい。


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